試験対策には「読み」か「書き」か

 

 ネットの記事を読んでいて、ちょっと気になったので、すぐ思い出せるよう(探せるよう)にメモ代わりに書いてる記事です。

 

「読み」か「書き」か。別の言い方をすると、「インプット」か「アウトプット」か。

※なお、ここでの「書き」は写し書きではなく、問題を解いたりテストをしたりといった内容の「書き」を指します。

 

 

今日、こんな記事を読みました。

確実に覚えたい人向け。記憶定着に効く “繰り返し学習” にメモ術「ツェッテルカステン」が役立つワケ - STUDY HACKER(スタディーハッカー)|社会人の勉強法&英語学習

 

この記事の内容は、タイトルの通り「ツェッテルカステン」というメモ術が繰り返し学習にいいよ、というものです。その結論までの話の途中に、記憶の定着には繰り返し学習が有効なことと、想起テストの繰り返しで記憶が強化されるという研究結果の説明がありました。

 

その「想起テストの繰り返しで記憶が強化される」という話に「お!」と思ったわけです。

 

自身の試験勉強の経験と、10年間の予備校講師生活で様々な学生の指導・アドバイスを行っていく中で、なんとなく「教科書を読むより、テストを繰り返した方が成績アップにつながりやすい」という感覚はありました。

学生にも「勉強は問題ベースで進めていこう」と指導し、この言葉を信じて取り組んだ学生は確かに成績の伸びが良かったように感じます。

 

ただ、あくまで経験則で、実験したわけではありません。勉強法の合う合わないの個人差もあったり、実際に成績が伸びる実感や結果はやってから出るものなので、サボりたガール&ボーイに説明しようと思っても、説得力が弱かったんです。(私の話し方の問題もありますが)

それがこうやって研究結果になっているなら、数値として表れているなら、説得力が増すじゃないか!これなら納得してもらえるんじゃないかと思ったわけです。

 

 

さて、内容についてSTUDY HACKERの記事によると、この研究はセントルイスワシントン大学が2006年に「Psychological Science」で発表した研究だそうです。

この研究で行なわれた実験とは――研究に参加した学生らに資料(約270語のテキスト)を与え、

  1. 4回の熟読
  2. 3回の熟読と1回の想起テストの組み合わせ
  3. 1回の熟読と3回の想起テストの組み合わせ
といった条件を設け、その5分後・2日後・1週間後に最終テストを行なうというものでした。 すると5分後の最終テストでは、【A】の繰り返し熟読を行なった条件が、記憶の改善に役立つと示された(テストの成績がよかった)そうです。しかし1週間経つと、【C】の繰り返しテストを行なった条件のほうが、大幅に記憶の保持力が高いとわかったのだとか。

 

 

 

論文もあるのですが(もちろん英語)、岩手大学のHPにも関連する記事があったので、こちらを読ませてもらいました。

憶えたければ思い出せ!:想起の学習促進効果 - 国立大学法人 岩手大学

 

図2は研究例です。約270語のテキストを用い、1回5分の熟読を4回繰り返す条件(SSSS)、3回の熟読と1回の想起(テスト)を組み合わせる条件(SSST)、1回だけの熟読と3回の想起を組み合わせる条件(STTT)を設定しています。学習がインプットだけで成立するなら熟読を繰り返すSSSS条件が最も成績が良いはずですが、1週間後の成績に現れている通り、想起を多く実施した方がよいのです。現在では、想起の脳内処理によって長期記憶用たんぱく質の合成が細胞体で促され、それが細胞同士のつなぎ目であるシナプスに長期増強を生じることが原因と考えられています。
図2.学習した後、5分後(左のグラフ)か1週間後(右のグラフ)の最終テストの成績.Sは熟読、Tはテスト(想起)を示す.熟読を4回繰り返しても1週間後には忘却が進むが、熟読が少なくてもテストをすると忘却が緩やかになる。Roediger & Karpicke (2006) Psychological Science, 17, 249-255.

岩手大学の記事でワシントン大学の結果を示してくれています。このグラフにあるとおり、「読み」を何度も繰り返すより、読みはほどほどに「書き(テスト)」を繰り返す方が記憶は定着することが明らかになりました。

読んだだけのグループの成績が1週間で約80%→約40%になっているのに対し、テストを重ねたグループは約70%→約65%なのは驚きです。

これを言えば、サボりたガール&ボーイも納得してくれるでしょう!

「覚えてもすぐ忘れちゃう」という学生ほど「覚えてないからまずテキスト読みます」というんですが、そういう学生こそ、テスト(想起=思い出す)を繰り返す勉強をするべきかもしれません。

 

なお、岩手大学の記事にはもう一つ希望が持てることも書いてありました。

 

大学生を対象に、ワーキングメモリが扱える情報量とテスト効果の大きさの両方を測定します。ワーキングメモリで扱える情報量が大きくても小さくても同じくらいのテスト効果が得られるなら、これらの2つの測定値の間には関係(相関)がないはずです。これをテーマとする研究は2012年にはじめてアメリカで報告され、相関なしという希望のある結果でした。現在、日本人大学生を対象にして確認作業をしています。

※テスト効果:情報を思い出す(想起)ことで記憶が強化されること

ワーキングメモリとは、作業に必要な情報を一時的に保存し処理する能力のことで、この能力が高いほど学業の成績がいいことが知られています。

ただ、ワーキングメモリには個人差があるため、もともとメモリが小さい人は学習が遅れがちだそうです。勉強で周りから遅れがちな人はこのタイプかもしれません。

でも、この引用にあるように、ワーキングメモリの容量とテスト効果は壮観なしという結果が見られました。つまり、誰でもやれば成績は伸びるということです。

 

ここまでの内容をまとめると、

・勉強は、書く=テストする=思い出す(想起)が記憶の定着につながる

・テスト効果はワーキングメモリと相関しない

・問題ベースの勉強法は、誰でも成績を伸ばすことができる方法である。

ということが言えるかと思います。

 

勉強の仕方がわからない、成績が伸びない、と思っている学生に、今後は数字を使って説得力が増した説明ができそうです。

いやー、よかったよかった。